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ささやかな灯りの日々。
2017年 05月 29日 まぶたを閉じても流れない虹 魚眼レンズに切れ目を入れる、メスのつま先で震える分数を溶かし入れながら波動を濃く刻み込むように 盛り始めた夕焼けの呼気をなぞる視座はかち合って桜の編み目を持ち上げる 挿した虹はわたしとあなた両方の眼に二十八色の苛立ちをもたらすようなほのかな苦みで裂けていく 魚眼レンズに消えた痛み日常と彩りを切り分ける例えばここに肉眼を嵌めてみるのです。悲しいときはうるうブルー、微...
詩【~2017 春】
2017年 05月 29日 予言者は迷った拳を生きている ふるえる指先に魔物の舌擦り春のように短いまばたきを紡ぐ、祈りの海 縦縞のパジャマに朝陽が照るにぶい鼻先を雨の予感がすり抜ける長い袖に窓の染みが垂れていく 肥えたみどりの滴が光と刺し違えると若く、赤く腫れた後遺症の季節がやって来る スピーカーから洩れる冬の嗄れ声潰してしまえばノー、とは云えず ノートに影を落として50万人の生死の行方を彼女は綴ろうとしている70億人...
2017年 05月 29日 静かに耳鳴りが鳴っている階段の奥で結わえた靴ひもの固い目で亀の甲羅の下で耳鳴りが鳴っている 洗濯物が鳴っているグラスの水が震えているみずからに怯えているようだ地球儀の真裏で魚が跳ねるひしゃげた光に媚びている眠れぬ夜の恋人のように口角に鈍い痛みを乗せて歌っている静かに耳鳴りが降りてくる 深刻な被害者のように道を塞ぐ号外の群れ新聞紙の匂いが絡みつくスーツぴたりと貼りついた口紅で脅す横顔を曇らせた...
2017年 05月 29日 右手で握り締めた海辺の家に侵され始めている 藻が口から口へ渡る唇の皮が潮にひりついて歯ぐきの底をさらっていく、春眈々とみちびかれた導線を知らずに踏みしめる極楽の季節駱駝のこぶに塗りつけた舌ごと引っこ抜かれる季節 神の手で結わえた新緑は濃くわたしの影は薄べに袴に忍び寄る満ち潮が揺られて光を鏡と成す――気味、奇妙、気味が悪い。わたしは幾人もの影とすれ違う誰もが口を真一文字にして桜の空気に耐えてい...
2017年 05月 29日 夕擦れにこくりと頭をかたむける眠り盃を受けた黄昏は煮沸を控えたラクダの毛並みに渦を描いていくさしずめ気配と云ったところだろうか瓦屋根の先巨大なジーンズが色褪せたインディゴを差し向けている 春に出会う人は大きく、透明だ冬に出会う人は色濃く、神妙だ 私はその狭間でどきりとした感触も無く三月を手探りに歩みながらあのジーンズの土臭さを疎むでもなく食むでもなくただ小さな心臓に呼びかけていた、こころ欠く...
2017年 05月 29日 綿棒を当てると目蓋はピクピクと震えていた。 ただあなたを充分に愛していたかった優しく落下した木の枝のように穏やかに。 目蓋の地鳴りは雪融けの景色にせり上がってくる氷柱の声、タイヤの痕虹彩の敷地に人々の営みが添えられていく なつうまれですか と尋ねたらこくん と頷いた。わたしは冬に根をこさえていた 通り雨の余韻踏んだ水滴から授かった芽を繋いでいくそんな季節にめまぐるしく 想いを馳せた 閉じた曇...
2017年 05月 29日 ボタンをはずして胸の隙間へ手を当てる耳が潰れ産毛が湿る躰にふくよかな沼を掘る風が渡っていく 真青な顔した夕暮れが衣服の隙間へ焦がれをねじ込む舌が跳ね唾液がもろい橋を架けていく 細い息太い息こよりをひねていく熱い肩干上がった首棄てられた根に沿ってむなしい汗が流れていくのを薄目であけて見た 下睫毛へ吹きつける郷愁が未だ出会えない時の境地へ現を移す。 空へ噴射する桃の果肉を鳥が浴び羽根を濡らすつや...